ラモン・マルテイネスについて

共演予定のラモン・マルテイネスは、2月の半ばに捻挫し、 今回の公演のハイライトになるアダージオの振り付けができなくなりました。 この踊りは、各界から非常な評価を得ている作品で、フラメンコだけではなく、高度 な舞踊テクニックが必要とされています。

3月、4月とマルテイネスの回復を待ちましたが、他のフラメンコナンバーはともか く、一向にこの一番難しい作品ができるようにならず、 そのうちに作品全体としてのリハーサルはどんどんレベルが上がって行き、作曲者の べドロ・シェラが自ら来日したいと切望するようになりました。
よってペドロ・シェラ直属のミュージシャン全員で曲の練り直しが何回も行われ、四 月の時点でスペイン国営放送などからも引き合いが来始めました。
よって
治るかもしれないし、完治する時期と合わないかもしれないという微妙な怪我の経過 に公演の命運を賭けるわけにいかなくなりました。5月という、もう公演一ヶ月を目 の前にして、火を噴くような連日の稽古に踊り手が参加できないと、作品としては本 番だけに参加というわけには行きません。
マルテイネス以外のミュージシャンの結束と作品の向上は日を追うごとに上がって 行ったので、残念ですがマルテイネスには契約から降りてもらいました。

こうなるとマルテイネス以上の実力とカテゴリーの第一級の踊り手が必要となり、マ ルテイネスには師匠筋に当たるベテラン・ソリスト、ホアン・オガジャを得て強固な 作品と完成に向っています。
セビリアのギタリストの大御所として有名なホセ・ルイス・ポスティーゴがリハーサ ルを見て感動し、各界に喧伝してくれています。

生身の人間で行われる舞台は常にさまざまな危険に満ちていますが、このように元よ り一層のブラッシュアップと作曲者や共演者自らの情熱で更に高い質のものへと変貌 して行くこともあります。
突然の共演者交代で驚かれた事と思いますが、ここに謹んで事実の経過をご報告し、 皆さんのご理解と更なるご期待にお応えしたいと思います。
私にとって舞台は、最後の本番の一秒前まで最善の努力をする神殿だという思いで す。


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