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2004年05月のセビリア発信・つれづれ草
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●2004年05月28日(金)

テイクファイブ

水曜の稽古で一旦中止して月曜から再開ということになった。
この間に衣装屋に飛び、美容院に行き、必要な小物を点検したり大変だ。
水曜の稽古で寝不足のあまり冴えなかったものだから、みんなもここは心得たもので
こんな日は息抜きと親睦に少し使ってしまう。
それで稽古の合間におかしい話をどっさり聞いた。

マリオ・マジャはもう引退しているからさすがに昔の秘話なんかはもう話しても時効だ。
マリオとはさんざん組んでいたペドロ・シェラから、面白い話がぞくぞくと出て来た。
ペドロはマドリーも長いからフラメンコ界のほとんど全ての人に通じている。

バーカッショニストというのは、やるなと言ってもつい色んな効果を探し求めて
不必要なことをしてしまうらしい。
そこで、マリオのアレグリアスの最後に4回転で決まる、彼としては渋く決めたいところで
パーカッショ二ストがシンパルを鳴らしたらしい。
回転し終わって、マリオは振り向きざま、
「首だ」

ははーーーみんなで大笑い。
クリストバル・レジェスは、こんな格好で踊る、本当にこうだぜ、なんて
やってみせる。コンバスがみんな外れるとか言う話。信じられない有名な人なのに。

こういう話題に上らないアーティストにならないといけない、と笑いつつちょっとぞっとした。
実際、自分の仲間の尊敬を集めておけるように、常に稽古を積んでおかないと、
色んな人達と仕事をする一流の人達から「あれは酷い」、みたいに言われてしまうと致命傷になる。

20年近く前のビエナル。
ペドロ・シェラが伴奏。ミンブレが登場。すくっと立った途端にズボンの端からクリーニング屋の
ホチキス止めのチケットがぶら下がって、みんなバックは笑いをかみ殺すのに死ぬ思いだったと言う。
えーーーー!!??私、気がつかなかったなぁ。
ビデオ持ってる?見てご覧よ、ぶら下がってるから。

「ミンブレと言えば.......」ホアン・オガジャが追い打ち。
出て来るなり何の間違いか照明が消えてしまった。
するとクーロ・フェルナンデスが声音で詩の朗読風に
「ミンブレ、ミンブレ、光はどこに?」
「光は....ここだ!」
言うなり照明係がミンブレを照らし出したと言う話。
みんな可笑しくて死にそうになったという。
実は私はこれを見ている。へえ、あの時ホアンも見てたのか。

これに良く似たシーンを私は別の男性の踊り手でも目撃している。
出て来るなり照明のプースに向って叫んで怒ったのだ。お客を飛び越して。
その後、光に浮かんだ彼は、癇癪のまま踊り続けた。

日本行きの飛行機と空港で、又面白い話がいっぱい飛び交う事だろう。
楽しみのようでもあり、恐ろしいようでもある。
アーティストはこのように待ち時間に人の噂をするのだ。

●2004年05月27日(木)

一昨日の稽古はみんなの熱が上昇していて、
踊り終わった時にペドロ・シェラが拍手したほどだった。
これは凄いな、と安心したくらいに全部が期待以上の出来だった。
その後に衣装にもう一工夫必要だと思って手直ししていたら
夜中を回ってしまって、朝起きたらげっそり。
寝不足は最大の敵だ。
昨日の稽古は始めからさんざんだった。
なんだか気が散漫になってしまってドジばかり踏んだ。
今日は悪いけどもうソロも何も私は通さない。
時間はホアンのソロの直しにでも有効に使って欲しいと譲ってしまった。

ホアンはアキコは気が入りすぎだ、もう安心するべきだよ、なんて言う。
これ、根拠ない。
実際に衣装がまずいのだ。なんとかしないといけない。
スペイン人はすぐにプロだから大丈夫みたいな事を言う。
正しいようでいて、そうでもないこともある。
やっぱり最後まで心に引っかかる事はちゃんと始末しておかないと舞台の本番で自分の怠慢の付けが
回ってくるのだ。

ビデオに稽古を収めて午後デイエゴに相談に行く。
これから振り付けだと言う人を人さらいのように脇にかっさらって行き、
ビデオを見せる。
「ここ、ここが私、どうしてもまずい気がして納得できない」
「うん、そうだね、月曜に行ってあげるよ」
子供のように小指を出してげんまんまでさせる。
絶対に絶対に絶対に来て!!!!
日曜の夜にも電話しよう。月曜の朝にもリマインダー電話しよう。

平気だよ、なんて言われても気のせいでなんかないのだ。
そう思うにはプロの芸歴が長すぎる。スポークスマンに来てもらわないといけない。
月曜にデイエゴが来てくれないと本当に嫌だと思う。ここの下りは少しノイローゼチックだけれど
実際約束したけど行けない、みたいな事は頻繁に起こるのだ。

アレグリアスのバタデコーラまだ出来ないし、あっちのちょっと、こっちのちょっとをみんな総合すると結構辛い。
グワヒーラスの扇子を絵描きに出して昨日やっと出来てきた。これはいつもは一ヶ月かかるのに10日でやってくれた。無理が利くのはセビージャだからだ。
ここでは本来はできないのに私の我がままを聞いてくれる人をいっぱい持っている。
他の土地に行きたくないのはこれも理由の一つだ。みんなに感謝しないといけない。

マントンの刺繍図柄と色を400年前のにしてもらった。
ああーーーやっぱり素晴らしい。
絹には寿命があるから本物の博物館にあるようなマントンは勿論使えないけれど、
デザインの復活だけでも気品が違う。
靴は色合いが違っていて六ヶ月もかかった。
履き慣らしてまだ一週間ちょっとだ。なんとかこなれそうではある。

髪をなんとかしないといけない。
今度は早代わりが凄いので、本当にできるかの練習もしないといけない。
踊りって、それ以外の要素も項目がいっぱいで本当に大変だ。
楽しみだと思うのと、あれもこれもまだやってない!と焦るのとが頻繁に交錯する。

その上、土曜は新体操のトーナメントがセビージャだから絶対に顔だけでも出して、と
昨日言われてしまった。断りきれなかった自分を少し呪う。
ああ、来週はもう日本だ。
月曜にデイエゴが間違いなく来てくれさえすればあとは何がどう足りなくても満足かもしれない。

●2004年05月26日(水)

星屑の降る地下室

今回の公演のプログラムに下手な詩を入れた。
もっと上手いのが載せれたら良かったけれど
詩なんか思春期からこっち書いた事が無い。
でもどうしてもプログラムに詩が必要だとしか思えなかった。

共演者にもちゃんと知ってもらわないといけないから今朝
稽古の前にスペイン語訳してプリントした。
みんなに配ると結構驚いていた。
へえーーーこういうのなのか、君ってこういうの自分で書くの?
ペドロが驚いた顔でしげしげと読んでいて、さすがにきまり悪くなってしまった。

でもお陰で、どういう気持ちが底流にあるのか更に分かってもらえて
ホアンの役どころがはっきりとした。

一部でたったの二分しかかからないシーンで
タンゴのリズムを使う。

これがざっとみんなに説明しただけであっと言う間にできてしまった。
さすがだと呆れるくらいに、みんな立派だ。
それがもう、フルオーケストラというくらいに素晴らしい。

あんまりあっと言う間に、想像よりずっと凄いものができるので私は面食らってしまったくらいだ。
で、
このタンゴでホアンがまるで星屑を引きずって来たかと呆然とするくらいに
世にこんな素晴らしい男性がいるだろうかと、金縛りになるくらいに上手い。
本当に私の地下の稽古場に、星がちりばめられたみたいに見えたのだ。

もうどんなに上手いかというと、我が子供に誓ってこんなみごとな男性は見たことないというくらいに凄い。

彼のどの踊りもみんなうまいけれど、このたったの冒頭の一分くらいが、もう絵にも描けない、文字にもならないというくらいに凄い。
私は長く色々な上手な人を見て来たけれど、こんなに「男性の魅力だけでできている」と思わせる踊り手を見たことが無い。誤解が無いように。あくまで舞台で男が200%男の魅力に満ちて見えると言うのは、
その人の芸の深さと才能なのだ。

女もこんないい女が世にいるだろうかと思わせられるくらいの上手でないといけない。
けれども女の場合は男よりずっとこれは実現可能なのだ。
男の踊りでそう見せるのは、大変な才能としか言いようがない。

ホアンが、タンゴのリズムになった途端に気が遠くなりそうに上手いのだ。
本当に呆然としてしまうくらいの絵になる。
絶対に誇張じゃないです。もしも本番の舞台でそれが感じられなかったらその人は芸事は辞めた方がいいくらいに彼は素晴らしい。プロの中のプロだと思う。一流のプロしか見てなくても更にプロだと思うのだから。

この素晴らしい踊り手は素晴らしい芸歴に満ちているのだけれど、
子供の頃から天才少年でずっと来ているに違いないのに、昨日、
「明日の稽古は絶対に来るなり始めるから一秒も無駄は止めてね」という
私のきつい注文にきっぱりと応えて、少しの甘えも見せないのだ。舐めた態度も馴れ馴れしさもない。

これだけ毎日稽古していて、これだけの芸歴の立派なアーティストが、こんなに生真面目にするってそれだけでも
希少だ。彼はとても忙しい。それが朝の九時半にびしっと来る。(スペインの9:30は7:30くらいの威力がある)
来るなり雑談も無しにさっさと着替えて稽古に入ってくれる。

あなたの役どころは、この詩の通りのキャラクターなの。
ここの所はあなたはものすごく上手いのだけど
圧倒されるくらいに本当に素晴らしいから私、とっても変えるのが残念なんだけど、主題にそぐわないから
もっとこうして。できそう?ダメだったら無理にはしないでいい。

できないんじゃないかな、と危ぶんでいたら
「いや、僕は舞台での事はちゃんとやるよ」
そう言うなり、またもや見事に、押されてしまうくらいに素早く役どころを掴んで一分でやって見せた。
いやーーーー感心!!
こっちがしどろもどろ.....えーーーと、今夜これ、私のパート研究しておく。
ふえーーーー大変。
しっかし......簡単じゃないのにみんな一秒とか一分で何でもできる。
本当に素晴らしいメンバーだと思って今日は感動してしまいました。
あんまり事前に言うと舞台が色あせるか心配かと言うと、これがもっと熱い舞台になる予感がある。
もう本望だというくらいに今日の稽古は凄かった。

ああーーもう10時だ。
これから明日の朝のために研究しないといけない。
今日は迫真の演技で衣装がなんだかあちこち破れてしまって、繕わないといけない。
ホアンの気力横溢で突き指してしまったし、なんかぼろぼろだ。
あれこれぼろぼろになりながらも、心は感激で酔っ払っている。
さぁ、もう一工夫だ。

●2004年05月25日(火)

アイレ

フラメンコはなかなか難しいと思う。
全部出来ても、人間の匙加減だからちょっとしたところで上手く行かなかったりする。
最後は緊張のうちに全部ちゃんとやれるのがプロだけれど、練習の時はなんで?というようなことがよくある。
あっちで一匙こっちで一匙まずいと、最後はとてもまずくなる。
踊りは本当にいい加減な所で妥協してはいけない。
ノイローゼになりそうに細部を注意して注意して全部潰さないといけない。

Juanが、ここはいつだって君はちゃんとやれてるじゃない!どうしたっていうの?何心配してる?
責任の重さにナーバスになってるんじゃない?君はすごくちゃんとやれてるよ、なんて言う。
これを信じちゃいけないんだな、ビデオ見るとやっぱりまずかったりする。
ほーーーーら見なさいよ、こんなにまずいじゃないの!!!
もう少しで、この緑色の大きく見開いた瞳のいう事は本当かもしれないと思うところだった。
甘いなぁ、私も。
信じた方が楽なことはすぐ信じようと安易な考えが理性と経験を侵す。
ビデオになんでも撮って反省するに越した事はないのだ。午後中かけて稽古の様子見て反省する。
これより正直な教師も学校もない。
自分の目は確かだ。

パーカッショニストがあのアレグリアスは素晴らしいよ、と言ってくれた。
僕はあんな風に踊れる人を最近ついぞ見たことがないよ、と。
この人はカデイスの人だからアレグリアス発祥の土地っ子だ。
書いてもいいかなぁ。生徒だけが見ていると仮定して.......。

僕は君の事を尊敬しているよ。なんと言ってもフラメンコの洞察と知識が凄いよね、
こんな人はアンダルシアでも滅多に見ない。外国人としたら君より他に見たことない。
それにその踊っている時の豊かな感情表現が一番驚かされた事の一つだよ。

これは実は信じようと思う。
プロって上手で当たり前だからいちいちリハーサルで人のことなんて褒めない。
褒めないし、驚いた顔もしないものなのだ。
どう?て聞くと いいよ、て言われてお終い。
私の感情は私だけのもので、これが演技や練習ではないことはすぐに見抜ける。
踊りに血が通っていて、その血は赤いほど素晴らしいのだ。
技術の習得はプロには絶対だ。まずはこれがないといけない。
次は感情。
この順序は逆ではない。

感情の発露というのは人間の一番正直な奥深い真実の声で、
これが理性と道徳の下で窒息している。
感情は美しいものなのだ。
芸術はこれと密接に繋がっている。

さぁてといい気になってゴタク並べてないで、ダメだったとこちゃんとやってから寝よう。
明日できないと、今日の賛辞は気のせいだったと彼に思われる。あはは......

●2004年05月22日(土)

フラメンコは一つのようでいて実は種類がいっぱいある。
練習生が戸惑うのも無理はない。
この環境の中にいてさえ、私も戸惑う事が多い。

昨日、ホアンとちょっとこれについて話した。
ここ10年くらいでフラメンコはコンテンポラリーの混ざったようなのも出て来て
これが決して悪くない。
悪くなくてカッコ良かったりするからいけない。
うーーん、こういうのも有りか.......になる。

ホアンはもの凄く難しいリズムもやるからどう言う意見かと思ったけれど
私がやるようなブラソとかコロカションの伝統のフラメンコは絶対に捨てがたいと言う。
伝統のをやると、足の所でいきなりホアナ・アマジャとかジェルバブエナ風にはできない。
けれども伝統の足は工夫が足りない。
ここをどうするかが問題だ。

数寄屋造りの家のバスルームのサニタリーは現代にしたい、みたいに難しい。
しっくりさせないといけない。

マルティンによるとモダンをやってもマルカールでまた伝統に戻ればいいと言う。
そうかもしれない。
今年はこれに取り組みたい。

足をやると犠牲にしないといけないスカートさばきや、ブラソが出て来てしまう。
私はこんな時は足の方を犠牲にしてしまうの、と言うとホアンはそれでいいんだよと言う。
僕の芸風もモダンとは言い難いんだ、と。

確かにとてもクラシックだと思う。
何ていうか、昔のバイラオールのコロカションが随所に出ている。
そういうマルカールとかスタイルに独特の気品がある。

やっぱりああいうものは捨てがたいな、と思ったりする。
足で窒息しそうに攻めて行くと必ず、ここで切ろうと彼は指示している。
どうでもいいみたいなマルカールを少し入れる。

こういう作り方は私にはとても好感が持てる。
私の作り方と方向が同じみたいだ。
上体を入れている時にホアンとは息が合う。何も言わないでピタッと
振り付けが決まったりするのだ。で、こうしようね、とも言わないでそうなる。

ホアンは近年、砂浜で子供達とサッカーをしていて腕を折ったと言うのだもの。
公演間際だったので、サンフランシスコとロスアンジェルスの契約をパーにして
気絶しそうになったそうだ。
つまり、失うギャラにめまいがして。

これを聞いて胸が悪くなってしまった。
稽古の帰りがけ、「あと二週間、サッカーやったら殺すぞ!!」とその背中に言った。

●2004年05月20日(木)

車を買い換えた。
勿論、昔から何かとお世話になった日産車だ。(こんなに遠くてもちゃんと義理立てする私です。)
トヨタのCFにはさんざん出していただいたけれど、トヨタのお店が全然スペインのこの辺りに見かけない。
そう言えばホンダのCFにも出していただいた。
日産はカレンダーが初仕事で、トヨタはカローラとオーナーデラックスのシリーズCFに出た。
あの映像、電通の奥深くにあるらしいのだけれど、いただけないかしらん。
92年に電通の常務が、見つけてあげますよと言ってくれたのだけれど、あれから10年......
もうどこにも無いかもしれない。

子供の頃の私は、写真を見ると何ていうか胸がじいんとする。
フラメンコへの切ない思いと憧れで、いっぱいだったのだ。
その一途さがどっとこちら側に流れて来る。

ああ、この子を手塩にかけて育ててやれたらな、と思う。

サビーカスのレコードを買ってきて、ベークライトのカスタネットを買ってきて
誰にも教わらないで、きっとこうたたくのだろうと自習していた小学生の驚くべき情熱の少女。
右手も左手もカルレティージャができてしまっていた。
左はゴルペだけとは知らなくて。

いつの日かフラメンコが習えた時に基礎ができているようにと、一生懸命考えて練習していた
笑っちゃあ<かわいそうなあの子供......
ぐずぐすしているとスペインの少年少女に追いつかないと
キッチンの板の間で一生懸命柔軟して縦横180度は絶対に保とうと知恵を絞っていた子供。
笑ってしまうけれど、笑っては本当にかわいそうなくらいに本人は思い詰めていたのだ。
それを知っている唯一の大人として、私はなんとなく切ない気持ちになる。
貯金箱を空にして出かけたサラ・レサーナの日本公演で
たまたまお隣に座り合わせたのが上智大学のスペイン語学科の
アユカール教授。
以来ずっと懇意にしていただいた。
ついに私はこの短大にまで入ってしまう。

エンリケ・R・アユカール神父は、赤い表紙のあの素晴らしい「スペイン語一年」の著者です。
アユカール先生にはいつもスペイン大使館から来日のフラメンコ公演のチケットが回ってきていたので
ご相伴にあずかってタダで全部にお付き合いさせていただいていた。

もしかして今回もスペイン大使館にご招待すると上智大学の神父様に行くのかしらん?
おお、大変だ。バリー先生とアユカール神父に公演のお知らせ行ってるかしら。
誰かの事を思い出せなくても、その人が大切な人ではないと言う意味ではない。
そんな理屈通るだろうか........うっかりしてしまった後で。

車を買い換えてどうした、ていうところで話は頓挫。
外はもう32度をマークしていて、と続けるつもりがあっしまった!でお終い。このまま稽古に突入の今朝の私です。

●2004年05月19日(水)

フラメンコ、今後の展望

ここの所スペインでも日本でもテレビに出て欲しいと言われて色々考えさせられた。
私はテレビが好きではない。なぜならこれを作る人達が
常に追われている。時間にも時代にも流行にも。
そうして色々と不本意なことをするのだ。
瞬時に忘れられてしまうような番組のために。
これに巻き込まれると大変だ。瞬時にして不本意なことだらけになる。

ドキュメンタリーなんて私の家族がみんな迷惑がるだろう。
日本でもスペインでも二回お断りしている。
テレビに出ないと「一般知名度」というのは高まらないらしい。
日本はとにかく一般知名度がないと何もできない国なのだと最近分かった。

スペインの有り難い所は、知名度はあるに越したことはないけれど、うまければいいのだ。
お客に見る目があるので、有名無名に関係なく、上手いアーティストを愛する。
だから有名にならなくても、上手いと仕事はどんどん来るし、それなりに高額のギャラは払ってくれる。
スペインの偉いところはここだと思う。

日本は一般の人が劇場に足を運ぶのも間遠だけれど、企業は協賛をなかなかしてくれない。
企画書ばっかり出させて、何年にも及ぶ。
気長な国だぜ、命がいくらあっても足りないぜ、て感じだ。

国は文化に予算をほとんど割かない。
紫綬褒章なんていう若いうちには絶対にもらえない勲章がいただけるようになってやっと
海外に派遣してもらったりするらしい。
紫綬褒章の人が優先になると私のような「若者」にはもう国から何にも
してもらえない。
寒い国だなぁ.....昔も今も。

自分の歩んで来た道を、奇しくも反省する機会に恵まれて気がついたのは、
若い時に日本と言う国に行き詰ってスペインに出たけれど、あれは正しかったということだ。
それから売名とは無縁で、又、そういう事に不器用でもあり、ただただ一心不乱に芸に生きて来たけれど
それも正しかったと思える。

私には他に興味がないのだ。

世の中に欲しいものは一つしかない。
上手いアーティストになる事だ。
昔も今もこれしかない。

今後の目標は何ですか、といつもマスコミに聞かれる。
あんまり何度も聞かれるので考えざるを得ない。
何だろう.....?

昨日より上手になりたい、
これだけだ。
他に何かあるだろうか、不思議な質問だ。

誰かに認められたいのか、と言われれば
ペドロ・シェラに上手い踊り手だなぁ、て思われたいかもしれない。
二年前にドランテが、鳥肌が立ってしまったと言って本当に腕に鳥肌が立っていて
僕の音楽を本当によくここまで理解して振りつけてくれたね、ありがとう、と言われた。
君の前ではスペイン国立バレエも恥ずかしい思いをするよ、という最高の賛辞だ。
言われた時に周りには誰もいなくて、証人も祝ってくれる人もなかったけれど幸福のあまり気が遠くなった。
それなのに、日本でドランテと共演した後に、パセオの批評には
「まるでドランテと決闘しているようだった。もっと懐に抱くようにして振りつければ、云々」と書かれた。
どっちを取る?やっぱり作曲者の賛辞だなぁ、どうしても。

このように日本では報われない事もある。
評論家より私の方がフラメンコは専門なのだ。
やっている年月だって比べ物にならない。
日本人の好きな謙虚を引き合いに出しても、なりようがない、こんなでは。

謙虚さとは、謙虚と思われようとした途端に偽りになるのだ。
アーティストは自分の芸に対してひたすら謙虚であるべきで、それは誰も知らなくていいことなのだ。

私は、劇場で私と同じ空間と時間を供にしてくれない人には永遠に無名であり、
ただの一つのビデオも残さずに、肉体が滅びた時に消えてしまう、本当の舞台芸術家としてしか生きられない。
つまり、そういうことなのだな、と初めてはっきりと分かった。

このように理解できて嬉しい。
とてもすがすがしい。一生懸命精進しようと思う。
胸は喜びと生への感謝でいっぱいだ。
誰が何を言おうと時代が変わろうと、私の道はこのように昔も今もずっと変わらない。
有り難いことだと心から思う。

●2004年05月17日(月)


アナマリア・ブエノの紹介で凄く上手い男性舞踊手と近づきになった。
最近本当に素晴らしい男性と次々知り合いになる。
全くもって男運が良い。

この人はまだ30台の初めだけれど、有名舞踊団を次々経験して
現役で勿論活躍している他に、アンダルシア舞踊団の教師をしている。
振り付けもとても得意のようだ。

足がもの凄く強い。
フラメンコのアイレ物のほかに、とてもモダンなのもよくこなす。
家がなんと私と同じ方向の郊外で
信号も前を走る車も無しの、ノンストップで10分かからない。
これはいい。
ごたごたのセビージャに降りないで、さっと無駄なく会える。

家まで来てくれるというので、週に一度、踊りのメンテナンスというか相談役として
来てもらうことに決めた。
そうと決めたらもう全然待てないので、夕べの夜中の12時に電話して今朝もう来てもらった。
日曜でも来てくれるというのだもの、嬉しくなってしまった。

今度の公演のグワヒーラスもアレグリアスも全然振付けていなくて
即興で踊ってペドロ達から大変結構、オーケーと言われている。
そんなぁ.....どこかなんか欠点あるだろうに.....
毎日のように録画見るのだが自分では発見できない。

マルティンに聞く。
お願い見て。なんか改良点ある?足もっとやる?
ホアンと同じでもうこれ以上やらなくていいと言う。
かわいく出来てる?
美しいと思う?
うん、うん、ばっかり。

そうかぁ.....じゃ、この路線でもっと踊り込むとして
足もっと鍛えたいと思うの。コーチしてくれない?
音質とかリズムを重めに取るためのコーチ。そういう事を徹底的に見逃さないでしごいて欲しい。
「一年はびっしりやって欲しい。ほとんどあなたと同じくらいになりたい」、と言ったらとても嬉しそうにしてくれた。

男の踊り手のあのもの凄い足も一年しないできっとできるよ、とホアン・オガジャも言ってくれる。
あれは多分私はやらないけど、出来るのにやらないというのは芸に厚みが増すのだ。

これから本当に極めつけに上手い踊り手になろうと思うと、胸がしめつけられそうになった。
もう、期待と希望で目の前がばら色だ!!!
マルティンは腕の使い方とか首のつけ方にもの凄く厳しくうるさく言う。
その通りにすると本当にフラメンコ的になる。それはほんの一つまみのスパイス程度だけど
そこで差が出る。自分で分かっているけれど一ミリ足りないとか、そういう点をしつこく言ってもらう。

もの凄くうまい踊り手になろう!!!!なれるかも知れない。
みんながなれるよ、て言ってくれる。本気にすることにする。あーーーーがんばろう!!!!
めちゃくちゃ本気で頑張るぞぉぉぉぉ

●2004年05月14日(金)

照明のスタッフに郵送して研究しておいてもらうために
今度の公演のプログラムをビデオ録画した。
.........それから送りもしないで、毎日見て自分が研究している。

ついに今日はホアンを引き込んで二人で研究する。
思ったよりよくやっているので感心してしまった(こういう事を書くから人に呆れられるのだな、きっと)
即興で間合いを計りながら苛烈にやっているから、どう見えるかはあまり考えないで二人でやっている。
それが意外といい感じだと、ビデオが証明してくれると嬉しい。
でも細かい点で色々気になる事もある。
意見を出してもらって改良できると素晴らしいし、勉強になるなと思っている。
舞踊団が長かったり、様々な人と共演して来た人は滅多に人の踊りの欠点を言わないから
絶対に本当の事を言ってと、クギをささないといけない。
誰が悪くて一瞬あら?と思う箇所があるのかが良く分からない。解明しないと。

このビデオを持ったままメンケスに靴を取りに行ったのだけれど
試着していると、店に入ってきた日本女性から
「友繁先生ですか!?」と言われてしまった。私の集中レッスンに出ていた人だそうで
スペインに着いて二日目だと言う。
ちょうどお店の人にこの極秘ビデオを見せて欲しいとせがまれていた所なので
6月はまだスペインで無念だという集中生にも見せてあげた。

この男性、大きいですねぇ、先生とぴったりですねぇ!と感嘆していた。
私がヒール付だと170センチを越えてしまうので、並んでいい絵になる男性というのはざらにはいないのだ。
ホアンがヒール付で185センチというのは本当に嬉しい。
もう、思いっきり背筋が伸ばせて、プリエもしなくていいし、のびのびとブラソがやれる。
彼が本気で鬼気迫ると天井に届くくらいの腕とで、もの凄い図になるから、負けじと頑張ると結構な迫力の絵になる。ホアンにも君も女性の踊り手としては大きいよねぇ、と言われた。相手役がこのくらいの身長がないとホアンも踊りにくいだろうな、と思う。

衣装も私が選んだのだけれど彼は、「この上着を着るとなんかヨワッチクなった気になる」と言う。
「そんな事ないって!!みんなが気が遠くなるくらいにカッコいいって!!」
励ますのだけれど、彼は少し不満気だ。
私のセンスと照明で、この長躯の輝くような男性が登場したらどんなに素晴らしいかな、と思う。
普通、やきもち焼いて相手が目立たないようにする共演者も多いのに、私はそれはやらない。
文句言わずに感謝して欲しいな。
皆さん、ホアンの登場場面、息するのを忘れずに!

●2004年05月02日(日)

ホアキン・コルテス

この間OFSの録音スタジオに寄ったら、フランス人のプロデューサーと何年ぶりかでばったり再会した。
この女性は昔マノロ・マリンに習っていた事もあり、ご主人はギタリストなのでフラメンコ通だ。
一人娘のクラシックバレエについて相談されて、色々意見を言ってあげたけれど、束の間の会話では足らないほど私達は何年ものご無沙汰だった。

今さっき稽古の中休みをしていると、電話がかかってきて
近況を聞かれた。
あの日は慌しい再会でろくに話せていなかったのだ。
と言ってもあれから五ヶ月くらいは経っている。
お互い忙しくてまるでダメ。
こんな事じゃいけないねーー友達とは会わないとねーーーという事になった。

日本公演の話をしたらフランスでもどうかと言われた。
今度一度会ってちゃんと話そうということになった。

電話を切りかけて、ところでご主人は今は誰と仕事しているの?と聞くと
なんとホアキン・コルテスの専属だって言う。
日本でさんざんホアキン・コルテスと共演しろと言われ続けていたので笑ってしまった。
又出た、ホアキン・コルテス!しかも意外な近さに接近。

ホアキンの携帯番号を教えてくれると言うのだ。
五月は空いてる日もあったとか手帳を繰って、話は急速に飛ぶ。
はっ!!待って、ちょっと、6月終わってから。ひーふーはーーー

なんかなぁ.....お尻に火がついてしまった。

人柄良くないって評判だし、突然ドタキャンするし、神経ずたずたになるって言うじゃないの、
と言うと、うん、そうなのってあっさり認める。ふあーーーー嫌だなぁ、そんな苦しみを飲み込んでまで
共演したくない。普通そうな人だってやたらといろんなことがあるものなのに。
大丈夫よ、私からも話してあげるわよ、なんて言う。

ま、とにかく、驚いたな。ほんとうっかりできない。みんなあちこちで繋がっているんだもの、ここでは。

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