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[39] バレエのリスク Date:2003-03-15 (Sat)
亡くなってしまったヌレエフは、現役時代にものすごい努力の人だったと(珍しい話しではないけれど)いう逸話がたくさんある。40才を越えても日々の鍛錬でどんどん体が作られていたというのは傍近くで共演した人の話だ。

大人から始めてどうかなるんだろうか、という疑問が多いけれど、最近の自分の例で行くとどこからやっても上達しないことってないのだな、という感想がある。
この間鏡に映っているカッコいいアラベスクが自分の肉体だと知って狂気したくらいだ。
舞踊の専門家がこんなバカなことを言うのははばかられるし、内輪の内緒話でないとできるものではないけれど、筋トレ効果抜群のバレエレッスンは、私には「専門外の何か苦しいレッスン」としての期待が中心だ。

アラベスクって難しいし、後に反るというか後ろに上げる脚は前よりずっときついから上達なんかしないだろうと思っていた節がある。
それでも毎日ちゃんと欠かさずやるというのは、どんなに謙遜しても上達してしまう。あの無駄なんじゃないかというくらい難しい筈のバレエでも、だ。アンデオールももうダメと諦めることはないみたいだ。最近は更に柔軟になってきている。パッセも横から見るとかなりがっかりしたものだけれど最近は許せる範囲になってきている。
10代の選手達に混じって必死にやっているのが大変によろしい、ということになる。

クラスに入会するのに素人の場合は、自分に合ったスローテンポというのをほとんど間違いなく希望するけれど、きつめのレッスンも処方によってはぴったりだったりする。
私は昔からそのクラスでビリとか相当苦しい、というのが本当の選び方だと信じて来たけれど、これはプロ嗜好なのかしら、それとも性格というだけかしら?
誰よりもできない、というクラスは学ぶことがいっぱいある、ということだし、焦燥感のお陰で上達が目覚ましい、というおまけ付きでもある。一歩間違えると憂鬱のあまり何も楽しくなくなってしまうけれど、このくらいのリスクはあってもいいんじゃないかと思う。
荒野に咲かせる花、てとこかしら....咲かせないとね!是非。

[38] びっくり箱ークラシックバレエ教師ー Date:2003-03-11 (Tue)

 最近よく話題になっているディエゴというバレエダンサーは教師として本当に優れている。おそらく今まで出会った踊り手の中では一番に違いない。友人だから私とちょっと雑談をすることがあってもあっちで練習している子が目の隅にいつも入っていて突然会話をぶち切って注意に飛んで行くくらいだ。


注意してやらないでいる事の方が僕には難しいんだよ、と言う。
これは性格がこうなのだ。教師に向いているのだ。
どんな風にして一つのテクニックをものにするのかの彼の説明が微細で物凄い。私でも聞いていてふうん....と考えさせられることが随分ある。

ほとんど即席のようにして高いジャンプ、高いアラセゴン、高いアラベスクが小学生でもできないといけない新体操では、バレエレッスンの緊張感が違う。いつかできるように、という優雅なゆとりはないのだ。あと1ヶ月とかそういう時計が選手達を常に追いかけて離さない。

下は5、6才からすらーっとした18才の選手までが体育館の片面の壁いっぱいのバーにつかまってのレッスンは迫力がある。25人の粒よりの少女達はみんなアンデオールが完璧でどんな子供も脚が耳を超えてあっちまで行く。
ルルべのキープだって全員一分くらいしていられるのだ。
8秒くらいでふらふらしているのが一人いるとしたら、それは私だ。

カンブレをして全員が反ると、私一人が野中の一人ぼっちみたいに上の方で苦戦していることになる。淋しくてやりきれない。おーーい、みんなぁ...

センターになると脚をあげたままで3回転くらいは平気でみんなやる。
私は、たまったもんじゃないと思いながらルルべをしないでトライしているとディエゴから名指しで叱責される。(んもう...見ないで!)

グランジュッテなどのジャンプになると何をかいわんや、である。
みんな180度より上の230度くらいはラクに開脚できるように鍛えているから跳んだ時に空中でぱっと鮮やかに技が決まる。
自分はやらないで見るだけでいいなら心楽しい。

 訓練が終わって帰ろうとしているとコーチのビクトリアに呼びとめられた。
デイエゴが4月にキューバに行かないといけないと言う。国立バレエ団と何かやるんだったか出演するんだったか、とにかく1週間も留守になるらしい。

「それでね、ディエゴの代わりを誰か別の人に頼むこともできるのだけど何しろアンダルシア選手権直前の一番大事な時期だから滅多な人に来られるとせっかくそこまで積み上げてきたレッスン成果が台無しになるって言うのよ。」

うんうん...ホント、困った...大事な時に。
「で、デイエゴが言うにはどうしてもここはあなたにやって欲しいって。他に安心して任せられる人がいないって言うのよ。やってもらえないかしら?」
意外な展開に泡を吹く私。
「わ、私ぃ?打目よぉ...バレエは専門じゃないもの。とてもダメ。荷が重過ぎ。」
ビクトリアはがんとして引かない。

「...わかった、じゃなんとかやってみる。子供達よね?」
「えーーと...全員」
「選手達のこと言ってるの!?ダメ、ダメ、とてもじゃないけど責任きつ過ぎ。」
ここにはスペインチャンピオンの天才少女とその次席にひしめく候補が精鋭6人はいるのだ。大事な選手権前の追い込み時なんかにこんな重大な役目はご免だ。なんたって「レッスンで見本をやる人」が一番テクニックがないのだ。
おお、ぞっとする。
こんなツワモノ25人に囲まれてどうやってデイエゴ式のあの凄いレッスンの代教ができるだろう。

私、アガってしまうわ!!!どうしよう!

[37] アーティスティックの持ち場 Date:2003-03-05 (Wed)
アーティスティックの持ち場

(BBSが不調で私でさえ書き込みできません。
目下原因究明中です。暫くお待ち下さいね。)

 さて、いよいよ来月新体操のアンダルシア選手権があるので、選手達はウルトラ級の技と演技に目の色が違ってきている。
凄い演技の連続だ。みんな良くできる。

私はここのところ俄然振り付けの芸術部分に役割が回ってきているので忙しくてあっと言う間に3時間は経ってしまう。
とにかくもう緊迫した空気がみなぎっているので手を貸さないではいられない。

個人で出る選手達はアキコ〜と、すがるような目をする。ボールやなんかの手具については私は何にも知らないのだけど、回転を早くして追いつけ、とか、軸が偏ってるとか、まぁ、言えてしまうものね。
それは舞踊のプロなのだからどうしたら上手くやれるか、というのは見ていれば分析できるみたいだ。

このクラブにはスペイン全土で一番という11才の天才少女がいる。
この子の振り付けを見ていて、そこはこんな風に、と無言で振りを訂正したら5メートルの向こうから真似をする。
もっと首を長く、手に向かって、と距離を置いたままやって見せると素直にそうする。これはコーチが振り付けたのとは違うのだけどいいのかな、と思って心配してしまったけれど彼女はその方がいいのだと素直に信じているみたいだった。いいのかなぁ....オリンピックに出るかも知れない選手に口出ししても....まだ私は新体操のルールとか何にも知らないのに。
どうも1分30秒の中に10くらいの決められたウルトラ技が入っていなくてはいけなくて、その繋ぎがアーティステイックな振り付けでつなげてないといけないらしい。この部分は独創的なほどいいのだから私の出る幕があるらしい。

 さて、衣装だ。
どういうレオタードにデザインするか、というのは舞台の衣装以上に厳しい課題らしい。選手権で同じようなのを敵が着て来てしまってはダメなのだ。
刺繍やスパンコールなどで精巧なラインが命みたいだ。

スタイル画と生地見本をかかえてトレーナーはじめコーチ全員が討議していて中々決まらない。ついにこれも私にお鉢が回ってきてしまった。

あの子は長い首を生かしてこっちにしないと、この子にその色はダメ、絶対に引き立たない、...なんてもうここに何年もいる主のようにしてじゃんじゃん意見を言ってしまった。私はここに移籍した娘のただの付録で、まだ1ヶ月ちょっとのお付合いしかないのだ。
それでもついにはスペインチャンピオンの大切な今季の衣装デザインをする約束までしてしまった。スタイル画をさらさらっと描いたらみんなして突然尊敬のまなざしを向けてきた。いいのかなーーー?、やってしまって。

 これは結構遣り甲斐のある仕事みたいだ。
私はこういうのがとても好きなのだ。
トレーナーとコーチは辛そうにしている。きっと畑が違うのね。こういうのは本当のスポーツ系の人より私の方が適性があるかもしれない。
次回から全員の身体特徴を見極めてデザインしてあげてもいい。
子供の頃にデザイン画の通信教育を2ヶ月くらいやった思い出がある。
何がいつ、どこで役立つか分かったものではない。


[36] フエッテ Date:2003-03-04 (Tue)

舞踊の魅力はなんと言っても回る物にあると思う。
というと賛否両論になるかもしれないが、素人目に断然憧れとして映るのはピルエットを代表する回るものだ。

私はシェネが結構好きだけれど、ここのところ大好きで仕方ないのはフエッテなのだ。あれは見ても素晴らしく魅力的だけれどやってみるとこれまた魅力的だ。私はあれを筋トレに利用している。
なぜってきついから。

ももの内側が良く鍛えられる。
この、ももの内側というのがくせもので、私はここの部分を鍛えるためのマシンが大嫌いなのだ。あんなつまらない重いものなんかで延々とやっていられない。マシンの中では一番退屈だ。
横に寝て反対側の内腿を鍛える、あの体操もぞっとするほど退屈だ。

ああいう報われない、ただそれだけの、他に利用価値のない運動は真面目にやれるものではない。...それがついでに舞踊にプラスになる振りとしての運動でないと嫌という人間にはなお更だ。
ブレスレット二つ繋げるとネックレスにもなりますよ、みたいな。
リバーシブル仕立てで2色楽しめます。
そんな感じの筋トレしか嫌なのだ。
そう、ケチなの。レッスンは2倍にお得、みたいのばかりやっている。

フエッテはいい。
あれは大臀筋にも素晴らしく効く。鍛えにくい部位はこれでみんなオーケーで、その上やっていて楽しいし美しい。バランスを鍛えるのには格好の早道だ。フラメンコの人もあれをルルべでなくて良いので45度でもいいからやると違ってくる筈だ。
そう、ついでだからみんなやりなさい!この際。
あれはいいトレーニングです。

私は毎日フエッテの素振りは左右18ずつやっている。
「素振り」というのはセンターで回らないでやることをこう造語している。
テニスや剣道みたいに、バレエだって素振りがあっていいと思うのだ。
勿論黒鳥のあの見せ場の32回転フエッテを鼻歌で歌いながら。
すると気分はまことによろしい。

あとは本当に回る方も果てしなく稽古する。
もしかしたらついに32回転できるようになるんじゃないかと最近は希望に燃えている。
趣味は楽しい。プロは辛い。
フラメンコからスライドしてきてバレエで息抜きする。これもほら、リバーシブルだから後で舞台でお得になっております.....。

[35] ストレングスとコンデイショニング Date:2003-02-25 (Tue)
ストレングスとコンデイショニングの勉強を徹底的に始めている。
うるさいことばっかり聞くのでこれ以上マニアックな研究書はない!というくらいの本を岩崎トレーナーからあてがわれた。(なんです〜その言い様は!戴いた、と言いなさい!..母の声が聞こえそうだ)

 この分野を専門にしているコーチやトレーナーのバイブルらしい。読破するのに一年くらいかかりそうだ。理解するために行を戻らないといけなかったりするのだ。かなりの解剖学がびっしり入っている。
ぱらっと見ただけで、うへーーーっとなったが、ちょっと読むと引き込まれることが多い。私が根拠も理論もなく経験として身につけている事が正しい事として立証されている事例が本当に多いのだ。

未開の土着民が身につけている航海術が、オランダ海軍の書物で正統だと立証されているように驚く。いつも飲んでる自分の飲み物が科学者から絶賛されたように奇異だ。...で、土着民は本を読んでいる。自分の感覚の証を知るために。更に理解を深めるために、本来はガラじゃない物を根気良く...。

 私みたいに生涯鍛え続けてきている人間より、昨日今日フラメンコを始めた人の方が筋トレにしてもフラメンコレッスンで得る恩恵も顕著なんじゃないのかな、とこの間言ったばかりだけれど、ここにそうだと書いてある。私はもう何をやっても大した効果として顕われないのだけど、素人で始めた人はすぐに効果が出るらしい。ほう、凄い、やっぱりね。
私くらいに「運動すれっからし」になると死ぬか、というくらいに辛い何かをやらないと目に見えて来ないのだと書いてある。やっぱり〜〜〜酷いわ〜〜〜

で、最近新体操に関わって来ているというのは非情にタイムリーなんじゃないかと結論する。これより激しくてきついもので自分の専門でないモノってないなぁと昨日思っていたばかりなのだ。つまり習慣として慣れていない何かひどくきつい物が必要だったのだ。

けれども興味が持てない物は続かない。何かに役立つとかそれがそんなに嫌ではないことでないと。例えば重量挙げなんか死んでも嫌だ。ああいうのはやりたいと思えない。どんなに説得されても1日でも嫌だ。マラソンも嫌いだ。長いこと同じ運動を反復するなんて性分に合わない。変化があり、創造的で美しくないと。

膝や背骨の損傷とその予防、競技選手のプログラムなんかも勉強になる。自分のためのデザインが容易になるし、うちの子供クラスの子ども達、自分の娘用にもアレンジできそうだ。
それにフラメンコを成人してから始めて辛いとか悩むとかごたごた言ってる人達も、「こういうものに出会えて良かったじゃないの。どの道運動をしないでは健康は保てないのよ。」などと言っていたが、この本に全くその通りの数値が出ていた。
 最低限度、上達しなかろうがなんだろうが加齢とともにじっとしていても襲われる病気やさまざまな美容によろしくない原因から、とりあえず遠ざかるすばらしい要素にはなっているのだ。健康のためって言われてもレジスタンス運動をずっと続ける意志は持てない。

あの素敵なお衣装が着たい!ちょっとくるっと回ってみたい!
こういう動機でないとね。そのついでに健康が維持できているのだ。

[34] 集中力 Date:2003-02-22 (Sat)
新体操のチームに復帰して二日が経った。
このチームのバレエコーチであるデイエゴにプリセツカヤを見た話をしたら、彼は一緒にレッスンしたことがあるのだと言う。マドリーでプリセツカヤが国立バレエの監督に就任していた頃の事だ。

彼の言によると、プリセツカヤは教師としてはあまり優れているとは言い難い(友達の言う事だしなんとなくすぐ信じてしまう。そうなんじゃないかと思っていたので)技術はものすごくワガノワ式のいかにもロシアバレエという大変にテクニックを磨いた人だけれど、なんと言ってもその情熱と気持ちの込め方が卓抜していたと言う。まあ、言われるまでもなくその通りの評価の人ではあるけれど、友達から直にこういう評を聞くのは面白くもあり、嬉しい。カーテンコールなんかのレベランスがすごくてさ、というのには笑ってしまった。

 ところで、チームは私が日本に行っていたほんの10日かそこいらに目を見張るような進歩を遂げていた。

このエッセイの続きをちょっとさかのぼってくだされば、コーチが指導もしないで10才かそこらの子供に延々と難しい技を一人で研究させていると書いたのをご覧になれると思う。そこで私が教師としてのこういうやり方に疑問を差し挟んでいた事も。
結論からすると、あの、人間技とも思えない技術をこの10日の間にこの子供は克服していた。いじらしさと敬意とで、抱きしめてやりたくなった。

そう、勿論、自分の子供だけがかわいい訳ではないから全ての一途な子供達、テイーン達は私には本当にかわいいのだ。

ボールを首の後に挟んだまま後転してフイニッシュを決めるものすごく大変そうな技を来る日も来る日も何時間でもこれだけを、疲れた青い顔で練習していたクリスティーナは、これを見事に決めた上にもう大半の振り付けを前後に固めていた。私の驚きを想像して欲しい。
この子は、この技をいつでもコーチの容赦ない罵声のもとに(ホント、あんなのを日本で言った日には裁判沙汰になりそうな酷い手合い)繰り返していて、こんなんで選手権までに何かになるんだろうかとやきもきしていたのだ。

みんなこうやってウルトラ級の技だけを集中して手に入れ、あとはすらすらと振り付けを前後になぞってしまうらしい。コーチももう罵声は飛ばしていない。行け!跳べ!もっとダイナミックに!!...とかそんな怒鳴り声に変わっている。まぁ、胸のすくような演技...みんな本当に巧い。偉い、健気!
表現力もものすごくある。

いつだったか日本から来たコーチが、スペインの子供達はみんなとても老成していてやるべきことがちゃんと沈着に分かっている。だから個人でやるソロがあんなに大きな体育館でも少しもひるまないでやれる。日本の場合は個人が弱い。日本の女性は相当の年になってもちゃんとした大人としての精神が育っていない、と。
....こんな耳の痛い話でも何か参考になったり、反感を抱かずに読んでいただけるかしら?

[33] 現役の限界についてーマヤ・プリセツカヤー Date:2003-02-19 (Wed) <URL>

1998年3月の日本で、マイヤ・プリセツカヤが熊川さんと共演するので
チケット手配しましょうか?と大阪の集中生からわざわざお便りがあった。
私が見れない、見れない、と言っていたのを親切に思い出してくれたからだ。

私の方はちょうどブルーノート出演の契約が重なっていて、上野の文化会館での公演には成田から直行したら見られないわけがないという絶好のチャンスに思えた。着きたての日曜でその晩は私達の公演がないから行ける!は、日曜なのであちらはマチネー公演で昼間!というのがどうしても飛行機が着く時間と重なって見れない!!!になってしまった。
ああ、忘れもしない、無念で身悶えしたあれが、彼女の瀕死の見納めだったのだ。そして私は見れなかった。

 秋葉原スタジオの傍の中華料理店はマスターが私の密かなフアンらしい。
ここでアルバイトのかわいい女性は、バレエレッスンをしていて、彼女の通うどこだか随分私には遠く思われる京成電鉄の聞かない駅にあるスタジオに、昨日プリセツカヤが現れたと聞いたのは、ブルーノートの前後だ。プリセツカヤはよく、こういうスタジオに通うらしい。何かで縁のある人のつてらしいということだ。「もっと早く分かっていればお誘いしましたのにー」なんて言われても無念が募るばかり。
秋葉原至近の中華料理店に、プリセツカヤの一件を相談しようと思いつく訳がないもの.....お冷を運んでくれる女性に陳情してみようとしなくてどうして私の不明を責められようか。
ああ、こんなことなら誰彼かまわずわめいておけば良かったのかしらん?裏の印刷屋のおじさんが、ああ、プリセツカヤね、あの人とは長年のダチだってば、よし一つ...て、言ったかもしれない。????

で、京成電車に乗らずにうちのスタジオに練習にいらしてって言ったりできたかも知れない。瀕死のさざなみのようなブラソを私のためにちょっとやってくれたに違いない。
もしもってことがあるのだから、誰にでも何でも言っておくに越したことはない。

 もうチャンスは逃してしまったけれど、今度というのがあったらきっと最後だから行かないといけないと肝に銘じていた。世界の果てでも行こうと思っていた。それがこの間の公演だ。牧神の午後と聞いてがっかりしてしまった。舞台を横切るだけと知っていたからだ。
でも、もうほとんど80才なのだ。横切るだけだって見ないわけに行かない。
これは見ないといけないと飛行機に飛び乗った。

圧巻でした。

開演前に佐藤桂子さんや岡田正巳さんを見かけた。どういうご意見を持ったのか知り得ないけれど、舞踊家の現役としてきっと大きな励みになったのではないかと想像した。

プリセツカヤはあでやかで、十分に美しかった。
牧神の午後は想像していた通りにあっけなかったので、カーテンコールで目を凝らしてオペラグラスを最大にして凝視した。威風堂々としていて、磨きぬかれたレベランスをする。
彼女がバレエの登竜門のバレエ学校の試験に受かったのは、レベランスが良かったからだと後年に自身で述懐していたのを思い出す。8才での始まりも、そのバレエ人生の終焉も、レベランスに才能の全てが窺い知れるアーティストなのだと思う。
踊り手というのは、うまいかどうか知るのに踊って見せてもらわなくても十分なのだ。雑踏に混じっている時、遠くからそれと分かるのが一流の人だし、立ち姿が饒舌にその人の芸の深さを語る。
さらに舞台に立ってお辞儀をする時にその全芸域が知れる。

女性美というのは、どんなに頑張っても50代が限界だと信じてきたけれど、
60も通り越し、70も通り越してほとんど80才で、美しいなんて形容をまだしてもらえるなんて、自分の目で見ないと誰も信じられないことだろうと衝撃を持って考え続けている。
そう、あれからずっと考え続けているのです....

[32] バレエ技術について Date:2003-02-03 (Mon)
最近、日本の新体操のトレーナーと知り合いになった。
日本の事情を聴く事ができて中々勉強になる。

 エッセイを途中から読み始めた人は、どうして新体操の話ばかりかといぶかるといけないのだけれど、新体操にはクラシックバレエが必須で、選手は非情に高度で厳しいバレエレッスンを義務付けられている。

例えばスペイン王立舞踊学校のバレエ科などゴミ箱に捨ててしまおうというくらいにクラスの質が雲泥の差でこちらのが高い。
バレエ教師はキーポイントになるのでどこのチームも最高の人を競って抱えようとする。最高の芸歴という意味ではない。本当の実力を備えていて、選手のためにはどんな努力もいとわないとさえ思っているような資質を備えた人のことだ。

 先週の月曜に今年のルールが発表されて、今年一年間の選手権は全てこれに添って振り付けられる。新テクニックの研究がここのところ血眼で始まっている。益々人間技を離れた、ものすごいテクニックになっていると言う。
ちらっとのぞいてみても、
グランジュッテを空中で両足交互にアテイテュードしてダブルピルエットで着地を決めるような、えーーーー!!??というのが続出だ。

どうしてここのチームは男性のバレエ講師なのかな、と思っていたら日本から来たトレーナーがもう新体操の世界ではバレエ技術はほとんど男性のプリンシパル以上の技術が要求されているからなのだそうだ。
なあるほど〜〜〜!

 それにしてももう世界の選手達は粒ぞろいを超えてこれ以上は優劣がつけられないまでになってしまっているので、今度はできないようなルールと振り付けで落とそうという魂胆のような気がする。

...厳し過ぎて好きになれない世界だ。

ともあれ、舞踊の初心者のための...ばかりが目につく中、こういうのに食傷気味の私としては、いっそ世界で最高の、非人間的世界、という極端な環境でじっくり見せてもらおうと肝を据えたところだ。

[31] コーチの罵声 Date:2003-01-31 (Fri)

 新体操で新しく移ったチームは、コーチの罵声が体育館中に響き渡る。
 他所から見学に来たコーチから、自分が叱られたみたいに体が硬直する。
目をむき出してそれは身がちぢむように恐ろしい。
あんなんで良くみんないじけずに上手になると感心する、と耳打ちされていた。

 入会の時も母親(私)がいると怒鳴れないし叱れない、とコーチに言われた。いや、どんどんやってください。どんなに酷くても私より酷いことはないでしょうから子供はきっと平気です。と言った。

...でも、怒鳴られたところを見たことがなかったので、わざわざ二人のコーチに遠慮なくやってください。私は娘が往復ビンタをされるのだけはちょっと必要ないと思うので歓迎しませんがお尻をぶっても大声で叱り飛ばしても全然構わないですし、なんとも思いませんから、と宣言した。
二人ともあはは、と笑っていたが叱る風は一向にない。

 ここ二日ばかり別の仕事の振り付けで忙しくて子供だけ体育館に置いてとんぼ返りしている。そうしたら途端に怒鳴り散らされたらしい。
迎えに行ったら
「今日はミエルダだって言われた」と肩をすぼめていた。
へえーーー、凄い!ちょっとおかしくなる。母親にすぐに言い付ける年頃の子供にこんな罵声は普通、浴びせないのだ。
ビクトリアっていう人は勇気ある。

 昨日はコーチの二人ともに更に激しく言われたらしい。
ジエスチャーも鮮やかに真似してこんな風に二人に言われたと娘が報告する。

TAMAAAAARAAAA!!!!
Cuantas veces te tengo que decir!!!
Lo que estas haciendo es una MIERDA,de verdad que es una
MIEEEERDAAA!!!
(訳/タマァァァラーーーー!!!何度言ったらあんた分かるのよ!
そんなのは糞よ、本当の糞演技よ、そんなのは!!!)

するともう一人はうん、うん、とうなずき、

Estoy diciendo ya 40000veces,pero no lo hace!
(もう4万回も言ってるのにちゃんとやらないんだもの!)

で、これを受けて主任コーチが本当に本当に本当に糞だ、と重ねて言ったと。

あははは....言われちゃったねぇ、そうか!

子供はちゃんとした先生なのにあんな汚い言っちゃいけない言葉で怒鳴るなんて初めて聞いた、大人なのに、て驚いている。
どうしてなの?ママ?

いいのよ、スポーツ系なんだから。一生懸命直してあげたいと本気で心配しているとああなるんだってば。あれでいいの!何も言ってもらえなくなった時に泣かないといけないんだってば。

どれ、やってご覧。何がまずかったって?
Y字バランスでプロムナードするのに膝が曲がってしまうのだ。

軸足、軸足の事忘れちゃダメだってば。上がってる方はただの飾りだから軸の事だけ頭に入れておく。ずっと。かかとのアンデオールに気持ちを集中する。回ろうとしないでレレべ(ルルべ)になろうという気持ちで行けば膝が曲がらない。
タミィ、こういうものをやる時はどういう気持ちでやるのかが分かっていないと絶対にできないのよ。

あの鬼コーチと、説明派の私のフオローでなんとか行けるかな、と思った。

...しかしビクトリアの罵声は凄い。声がとても感じのいいアルトなので聞いていると耳に心地良かったりする。録音して行って日本の集中レッスンで適所に流すといいかもしれない。現地で取りたての罵声ですって....迫力あるかも。

[30] ウォーミング・アップとダウン Date:2003-01-26 (Sun)
いつも娘の話題で恐縮だが、これは舞踊やスポーツを始める適齢期のモデルを観察しながらの、私の初の実験記録であるのだから皆さんもそういう視点で勉強なり参考にしていただきたい。

 娘が入ったチームでは私はいずれ振り付けなどに参加するのだが、今は新体操全般を自由に勉強させてもらっている。つまり選手と一緒に訓練している。

どうも、おかしいとこの2週間ばかりずっと思い続けているのだが、このチームは非情に訓練プログラムがまずい。

アンダルシア最強を誇るチームなのだから、思い違いかな、と(そんな訳ないのだが自分の専門でないことには断定はすぐに下せない)検証していたのだけれど、十分なウオーミングアップもさせないでいきなりアクロバット的な背骨にうんと負担のかかるような技に入ったりして「あっ!!」と声にならない声を飲みこむ。

終わる時も申し訳程度のダウンで、あんなに偏った技の訓練を続けた後なのに、これでは年月と共に支障が出るのではないかと心配している。
間違った訓練というのは、微量のヒソを盛るように体を蝕んで行く。
私は新体操は素人だが、長年の経験と実績でこういうことには素人ではないから、目の前で子供が毒殺されて行くのをじっと見ている無力に煩悶している。
どんなチームにも欠点というのはあるものなのだ。
そして
どんなトレーナーもコーチも、母親に口出しされるのは嫌に決まっている。
踊りでもそうだが、昔バレエをかじりました、みたいなうっとおしい母親につべこべ言われることほどかなわない事はない。
私の立場は微妙だ。
かなりうっとおしい母親ということになる。
チームでは、自分の子供以外の全ての選手に助言していいことになっている。
これはつまり自分の子だけはダメ、と釘刺されているに他ならない。
小さい子供達の基礎訓練をいっそ受け持ってもいいのだけれど、受け持てない約束だからと自分の子供はあっちで毒殺されてしまうのは辛い。

....はて、うまい外交手段はないものか。

ということで、今日の差し迫った議題はウオーミングアップです。レッスンが始まる前に少し汗ばむくらいになっているのが本当だ。だから稽古場に急ぐ駅から始めないといけない。早歩き。下にはなるべくもう、半分くらいはレッスン着を着込んでいて着替えに手間取らずにスタジオ入りしたら続けてアップする。

ウオーミングダウンも、使った筋肉はよくほぐし、伸ばし、腰のストレッチも欠かさずにやらないといけない。その場でできない場合は夜寝るまでに必ず暇を作ってやる。

お肌の手入ればかりに時間をかけても全身がおろそかになっていたら美容効果がないのと同じだ。
あなたは三面鏡の前に座って顔のアップしか見ていないかも知れないが、人の印象というのは何十メートルも離れた全身から来るものだ。
踊り手の常識としてそれを忘れてはならない。

[29] バレエ教師の資質について Date:2003-01-20 (Mon)

 娘のバレエ教師が友達のディエゴになったのは最近の書物の中で言っている。先週、彼とちょっと立ち話していてまた、教師の資質について考えさせられた。

 ここで言う教師とは、その専門分野での一流の芸を確立している人のことで
かつ生徒は選り抜きでちんたらしていない、鬼気迫る向学心に燃えている世界のトップレベルの心がけの人達を教える場合についてだ。(侮辱していないですよ、趣味の人を。そういう趣味の教えと、何かにどうしてもならないと!と思いつめている人は違うのだから教師も違うわけです。趣味の人に苛烈に仕込めばみんな地獄に落ち込んでやめてしまう)

で、こういう教師を私もディエゴも三人は共通して知っている。

一人は王立舞踊学校のバレエ科の教授で、つい最近まで私の次女が習っていた。この人は私やディエゴには素晴らしい教師だったけれど、子供相手、王立の専任公務員となると態度が違ってしまう。
世界に飛び出せる実力があったのに容姿がプリンシパルには届かなかったり、色々と夢破れてしまっている。
毎日子供なんか相手にするのが嫌で仕方ない。
誰のことも育てたくなく、短い周期で鬱病になるらしい....

もう一人の私達の共通した教師は、モーリス・ベジャールの舞踊団で早くから認められて世界をかけめぐった実に実に素晴らしい、本当に目を洗われるような実力のダンサー。でも、この人も苦渋に満ちていて教師としてはどうかな、という日が多い。

卓抜していても、クラスに臨んでその実力を発揮しないばかりか、負の力が働く人はどうも教える立場としては長く続かないという結論に到る。

 ディエゴを見ているとクラスではテープもかけない。巻いたり戻したりする時間すら惜しいと言うのだ。この辺は私と似ている。でも私の場合は素人の愛好家が相手だから曲やリズムのCDがないと彼女達がイメージしにくい。(だから誰かレッスンの前に素早くセットして欲しいってよく叫ぶ。集中レッスン間近です。お忘れなく。)

ディエゴはレッスンに遅れて来ると入室を許可しないとまで宣言する。相手が6才でもだ。そのくらいに鬼気迫っている。
注意されて怒鳴られて泣かないようにね。何も言ってもらえない日が続いた時こそ家に帰って泣くべきなんだよ、と言う。

私はこう言って生徒に諭す気持ちは良くわかる。

まず、習う立場の心構えと常識を植えつけてやっているのだ。
踊りを習うには習うほうの基本の心構えというものがある。
これは長い舞踊生活の第一歩なのだ。
こういうことが出来ていないと精進することも叶わない。
技術ばかりでなく、というあれはここにも適用されるのだ。
資質に恵まれた教師に出会った時、自分の方に謙虚で聡明な資質がちゃんとあるか反省してみないといけない。

子供が相手の時にはこのへんから教えないといけないな、と思う。
大人が相手の場合は何をか言わんや、である。

[28] バレエーレベルを求めて Date:2003-01-16 (Thu)
移籍については大変だった。
それはまたいずれ機会があった時に。

翌日から新チームに移って毎日3時間の訓練を受け始めている。
さすがアンダルシア八県で最強と言われているだけあって選手の鍛え方が
まるで違う。どんなに小さな子供も私語というものをしないでこんなに長い時間一心に懸命におさらいしている。
ここにはスペインチャンピオンになった11才の選手を始め、これと紙一重という実力の選手達が目白押しなのだ。

やはりこのチームにもバレエ講師が居て徹底的な解説と訓練をしている。
ディエゴというこの男性は私のバレエ友達なのだ。
いつも一緒の朝のレッスンではそんなにずば抜けてどうという人とも思えなかったけれど、選手を扱うと彼はこの世界でぴか一の異名を取っていると評判だった。
昨日、間近で指導の逐一を見ていて納得してしまった。
指導は懇切で詳細を極め、そしてものすごく厳しい。

娘がやっとあの、王立舞踊学校のわんちゃん猫ちゃんの愚から脱出して
懸命にディエゴを凝視している姿を見て、胸が熱くなった。
お友達の娘だからディエゴも少しは情をかけてくれて、娘を直しながらちょっと私を見たりする。「いい感じだよ」と目で言ってる。
「お願いね」と見返す。

6才から8才くらいまででも粒よりの子達がずらっと15人は並んでいる。
みんなあどけないかわいい顔をしていても水を打ったように真剣に先生の言う事を聞いている。

ああ、これでなくては!と思う。
これこそやっと私が求めていた環境だと思った。ついにセビージャにはこういうレベルが求められないのでは、と苦しんで
イギリスやニューヨークに問い合わせまでしていた。
ウクライナやロシアからコーチを招聘しようとさえ考えた。
体育館を建ててチームを興そうとまで思いつめた。

大切な年月というのはお金では買えない。
環境がなかったら何を質に入れても買おうと思った。

最後は何にならなくてもかまわない。
結果なんかどうでもいいのだ。

こういう専門に生きていて、娘がいて、彼女に舞踊への十分な憧れと情熱と素質があったら思い通りのカリキュラムを施す、これだけが自分の使命だと思っている。
新体操は一つの手段だ。子供が求めるレベルがセビージャの舞踊にないからだ。体はともかく、心は柔軟に飽くことなく求めて、努力しないといけない。
そのためには周りにあるどんなものも利用する。
磁石のような情熱。結局これがあるかないかが才能よりも大切なのじゃないかと考えたりする。


[27] いよいよ退学、退会、移籍 Date:2003-01-13 (Mon)

この金曜にアンダルシアで最強と言われた新体操チームのコーチから娘の移籍を持ちかけられた。身体条件が優れていると三人のコーチから評価されたのは光栄の至りだけれど、今所属しているチームには当然宿敵のようなライバルチームなのだ。

 月曜から徹底的に娘の訓練に入りたいと言う主席コーチの申し出は、有無を言わさない強さだ。

私は一晩思い悩んだ末に、昨日あらためて会見してこの春のアンダルシア選手権が終わるまで移籍は待って欲しいと申し入れた。
あちらのチームでは娘にとても期待しているのだ。わずかあと2ヶ月のことだ。お世話になった人達に後ろ足で砂をかけるような真似はしたくない。
選手権が終わってからなら...

案に反して、これは一蹴のもとにはねつけられてしまった。2ヶ月なんてとても待てないと言う。この年頃の子供の才能はただの一日も無駄にできない。2ヶ月の感傷は子供の選手としての可能性を半年は遅らせてしまうと一気に説得されてしまった。
...私は苦しみの底でこのコーチの情熱と的確さに共感と信頼を抱かずにはいられなかった。キリでもみこむようにして一気に核心に迫る。

子供を何かにしようと思ったら6才から10才までで勝負はほぼつく。もう既に2年を無駄にしているのだ。これからの2年は正念場だし最後のチャンスだ。
「王立舞踊学校は...」
「ただちに止めるべきです。あんな所は時間の無駄です」
「あちらのチームではとてもかわいがられて良くしていただいているので」
「あの子が不憫過ぎます!あそこではあの子のせっかくの生まれ持った条件を延ばすことができない。義理のために子供の才能も殺してしまう!?」
...息がつまるような急展開だ。言っている事はことごとく正しい。

「月曜に待っています。訓練は毎日4時から7時まで。この春の選手権にはタマーラは私のチームから個人で出すことにしますからね」
挙句に選手権には敵チームから出場か...私は気絶しそうに気分が悪くなってしまった。

「....火曜からにしていただけます?月曜にはあちらのチームにきちんと挨拶に伺いたいので。」
「では、火曜日から。お気持ちはお察しします。心から...」

 この週末はずっとなんて挨拶していいのか分らずに過ごしている。

見限ろうとしているチームで、私はアーティスティック・コーチとして実際に参加し始めていたのだ。
...こんな急な変わり身を過去にしたことがあるだろうかとずっと記憶を辿ってみている。自分の主旨にはそぐわないからこういうのは一度もしたことがない。ああ、子供のためならどんな泥でもかぶってしまうのだな、と思うそばから苦渋に満ちてしまう。

 新チームでは振り付けと芸術面での協力もする。この春の選手権ではそっくり敵側に寝返るような形だ。
なんということになったのだろう...もう王立舞踊学校なんかこのすさまじさの陰になってしまった。あんなものはやめて当然、という価値に既に成り下がってしまっている。
  
 子供はと言うと、このチームに通うことになんのためらいも不思議も感じていない。目を見張るような粒よりの選手達が30人もいるのだ。私でさえその壮観さに心を奪われたのだから、子供の心にはもうこれしか映らなくて当然かもしれない。

 明日は...誰の顔もゆがむことなくお別れが言えたらいいのだけど。

[26] 王立舞踊学校ー退学させる? Date:2003-01-10 (Fri)

冬休みが終わって今日は王立舞踊学校の一日目だ。
私の8才の次女はここの一年生で、新体操と水泳も本人の意志で続けている。
私は沢山の稽古事をさせるのは反対だ。ただし本人が情熱家で意欲に溢れている場合は止めない。

 新体操はかなり厳格でレベルの高いクラシックバレエプログラムが組まれていて、こちらの講師の方が若くて熱意と情熱に溢れてい、王立舞踊学校の教授よりずっといいレッスンをする。しかも選手権がかかっているので普段のレッスンでも鬼気迫っている。二人の講師ともにビクトル・ウジャーテバレエ団の団員だったから、私は全面的に信頼している。

娘は王立の方をやめたくて仕方ない。時間がどっちもぴったり重なっているのでどちらかをやめないといけない。同じクラシックバレエでもここまで違うか、というくらいにそのレッスンは雲泥の差なのだ。

王立の方は初めてバレエをやる子、舞踊科に入りたての一年生ばかりだ。一方新体操の方のバレエは私の娘は四年の基礎があるので高学年の選手のクラスに入れてもらっている。既に2回転ピルエットやアラベスクやアテイテュードのフイニッシュが出て来る振り付けに四苦八苦する楽しみがある。

王立の方は秋からこっち、ワンちゃん猫ちゃんのポーズ、バレエ基礎の一番とクッペの正しいやり方、なんていうのを一歩も出ない。もう4ヶ月も犬猫だ。
「プロフェソール、お願いです。いつ本当のバレエをやらせていただけるのですか?」とある日たまりかねて聞いたというのだ。気難しい先生だから私は驚いた。
「それで?何て言われたの?」
「お返事がなかった。きっと気を悪くされたんだと思う。もう私言わないから...」

 今日も新体操の方ではばりばりのバレエが2時間もあるというのに王立舞踊学校に行く無意味に子供は打ちひしがれていた。

...子供の父親はあんなくだらない所は時間の無駄だからやめさせろと言ってきかない。夕べから私もいよいよ決断の時か、と思い悩んでいる。

私の知る限り、外部の予備校に通って大人になってから王立舞踊学校の試験を通った人はいても、一年生から実際に正式な生徒として全過程をこの舞踊学校で終了した日本人は一人もいないのだ。

娘はこの学校の試験に二番で入った。この先10年の専門過程の学費がすべて無料という条件をいただけている。
ああ....惜しい...。
ケチな母親は惜しくて仕方がない。
ピアノの上に飾るとなんだか嬉しいだろう卒業証書と全過程奨学生だったという栄誉に目が眩む。
悲しいかな、浅はかな母は逡巡する。

自分のスクールの子供クラスの主旨なんかにはばーーんと偉そうな事を言っておきながら、王立という輝かしい名前(だけ、なのに)とお城のような威厳ある学校と(見かけ倒しなのに)奨学生という肩書き(つまり無料)が惜しいのだ。あんなところは他にやる事もなく、暇を持て余し、大した才能もない人がだらだらと10年行くところなのだ。

 5月で一年目が終わる。どう逃げてもその前に私は決断しないといけない。
新体操の方からも王立をやめさせてこっちに専念して欲しいと言われているのだ。
どうしたって子供の意欲と素質はこんなところで10年も埋もれるようにはできていそうにないのだ。もう一人、もうちょっとだけ凡庸な娘がいたら面白かったのにな、などといじましく考えたりする私です。

そう、半ダースくらい欲しかったですね、娘。

[25]  子供の背骨について Date:2003-01-05 (Sun)

一か月前になるだろうか....末娘のトレーニング中に背骨が伸びないのを見つけた。脚を投げ出してアン・オーにすると腰のすぐ上の辺りがわずかにひずむ。どんなに伸ばすように指導しても伸びにくい。
もしかして生まれつきの欠陥かと心配した。

新体操のコーチ達は皆首をひねる。
そんな細かいところまで見たことがないので他の子供達がどうだか思い出せないと言う。
試しに同年の子供達も並べてみたが多かれ少なかれ伸びにくい。
でも私の娘の方がもう幾分ひずんで見えた。

ついに体育館付きのスポーツドクターにお出で願った。
この先生も今まで気をつけて見た事がないからなんとも言えないと首をひねる。長い医者稼業でもそこまで気にした事がなかったと言うのだ。でもそれにも関わらず専門医なんかには診てもらわない方がいいとアドバイスされた。
医者なんかにはなるべくかからない方がいいと言うのだ。
一理あると笑ってしまった。そしてこの先生は信頼できると再認識した。

 一昨日のバレエレッスンで親友のマリア・へスースに相談してみた。
この人は新体操選手のためのバレエ講師をしている。出身は有名バレエ団のソリストだから信頼している。

「どーれ、タマーラ、ちょっとそこに座ってみて」
「背中は大きな木の幹だと思って。一つ一つのげんこつでつながっているんだな、て思って。そのげんこつはなるべく離してやらないとお空に届かないのよ。もっともっともっと離してやって。うん、そう。でももっとよ。じゃないと届かないのよ」「噴水は下の方が狭くて、ふわーーーっと開くでしょ?あんな感じにやってみて。腕はだから噴水の水の....」

....この、魔法で見事に背骨がそうあるべきように伸びた。
私は舌を巻く思い。....しかし若いのに(まだ23才)よく子供を扱い慣れていると感心した。それにこの根気のよさったらない。私はとてもここまではやろうとしない。(何せ自分の娘だからいつももっとぞんざいだ)

 ともあれ生まれつきの欠陥でないことが分かってほっとした。

それにしても子供というのは体を伸ばすこと一つ取っても、やった事がないから何か頭にちゃんと描けるイメージを与えてやらないと理論では駄目なのだと言うことをまざまざと認識した。その代わりちゃんと絵を与えてやると素直になぞろうとする分、大人よりずっとましなのだ。

 それから今更だが、子供は体は柔らかくても筋肉が出来ていないから支え方がまだわからないし、力がない。

「しばらくそうやって正しい姿勢をしてみてとっても疲れちゃったら今度はこうやるのよ。そうそう。そうして休んだらまたやってみるのよ、分かった?」

努力の仕方とリラクゼーションまでちゃんと教えてやっている。マリア・へスースの的確さに見直す思い。ちょっとのんびりした物足りない講師だな、という感想を持っていたのだけどそうでもないと新発見もした。

 何につけても何かをきちんと仕込もうとしたら親だけはダメだ。特にその道の専門家の親はスーパーバイザーに徹して、直接の指導は別の専門家の腕に任せるのが最も望ましい。

[24] 累積効果について Date:2003-01-03 (Fri)

ここ数日突然、子供が2回転ピルエットをするようになったので少なからず驚いている。回転はまだアンデオールをやっと習うか習わないか、という段階だが、人がやっているのを見ていてたまらなくて自分でやってしまっている。

 まだ自己流できれいなフオームではないのだけど、子供が自分の心の美意識に訴えかけるものに出会った時、基礎とか順番なんか無視して情熱的にそれを習得しようというエネルギーはすごい。

教師としてはこれを押しとどめてはいけないと思う。こういう機会を上手に捕らえて、子供の意欲が燃えているうちに正しいフオームに少し直しておさらいさせるとあっと言う間にものにする。意欲的な子は飛び級でどんどん教えるべきだ。

 子供は、トゥールとダブルピルエットの他に、フェッテがとても気に入っている。この際だから回転の原理と共通について教え込んでしまう。興味が湧いて来ているうちは、砂が水を吸うようにして熱心に理解しようとする。こういう学習過程を如実に目の当たりにする嬉しさは、母親の特権かも知れない。
ここまでで「子供」というのは私の8才の次女で、私は教師としての実験的な目で学習過程を観察している。

 クリスマスで学校の休みが6日まで続く。途端に新体操は六時間トレーニングに突入している。午前と午後、昼食の休憩に2時間半をはさんで効率良くトレーニングが行われている。7、8才の子供達は、こんなものはなんでもなくこなしている。
子供というのは元来、とても長い事いろんなことをして飛び跳ねたりよじ登ったりして遊んだものなのだ。だから六時間のトレーニングなんて凄いようでいて実は何でもないのだ。
 そうして時間も長いが、こうやって集中して訓練されているとあっと言う間に色々な習ったばかりの技が出来るようになって行く。目の前ですぐにやってのけたりする気持ち良さと言ったらない。子供の能力というのは私達の何倍も素早い。あらためて驚嘆する。
 それにしても、累積効果というのは本当に特別の注意が必要だ。
何年、踊っているか、なんていうのは関係ないのだ。どういうテンションでどういう密度と反復でやっているか、というのが全てだ。
週に一回、10年の人は、週に三日三年の人に劣っても仕方がないのだ。
何年、ではない。累積効果の上がる方法を取るのが一番の近道なのだ。

[23] オペラ座の怪人ーロンドン観劇の巻 Date:2002-12-23 (Mon)
先週、仕事でロンドンに寄った。
 セビリアから2時間ちょっとなのに、まあ、なんという違いかといつも思う。冬に街をうろついたことがないので、どんなかな、と思っていたが予想を上回る寒さに気がめげてしまった。
第一、日の暮れるのの早い事といったらない。

3時にはまだお天気が悪い、という感じだけだったのに4時にはもうとっぷりと闇に沈んでしまった。7時過ぎまで明るいセビージャは夜でも出かけよう、買い物しよう、用事を済ませようという意欲に満ちていられるが、コートから出ている耳、頭、手が、帽子や手袋ってこういう時のためなのね!と思わせるようではふらふらする気がなくなる。

 ハロッズデパートはクリスマス前できっと楽しいプレゼントに事欠かないだろうと思いきや、ちっとも楽しくなかった。デイスプレイもセビージャより数段劣る。購買意欲がゼロになってしまった。

 コベント・ガーデンで白鳥湖だな、と思って駆けつけたけれど平日のこんなに寒い日のぱっとしないただの火曜日だというのにソールド・アウトだと言う。庶民の観劇の意欲に圧倒される。

自慢じゃないけれどたとえ暇があっても、火曜だの月曜に劇場に出かけようなんて根性は私にはない。
セビージャのオペラ座が家から5〜7分の至近なのに行かない物ぐさだ。車でドアからドアだって言うのにねえ....イギリスの方達って文化水準高い。失業だなんだと言っても凄いなぁ平日に、と感嘆。

重い夕食には全く興味がないし、買い物も好きではない私はやっぱり何か見てお勉強しないと!ていうのでこうなったら評判のオペラ座の怪人でも是非!
というのでロンドンの目抜き通りをまるで自分の庭のように突っ切って行く。
開演まで30分を切っているんだもの。
またもやレッスンで鍛えた筋金入りの脚で飛んで行く。
車なんかに乗ったら渋滞のロンドンでは金輪際間に合わない。

 ハーマジェスティ劇場は本当に素晴らしい。
素晴らしいけれど賢く買った、これしかないと言われた席はなんとまあ、天井桟敷も天井のこれ以上の天はないと言うほどの呆れたつまはじき席。

案内係りの男性に「ねえ...これしか本当にない?」と嘆きのつぶやき。
ちょっと乗り出すと自殺志願のようにまッ逆さまになりそうで舞台なんか見えやしない。
「一つだったら絶対に差額を出せばある筈ですよ!」て言うけれどもう開演二分前。1階まで降りないといけないというから4階席から駆け下りるめんどくささにぞっとしてしまう。...でもこれから3時間もこの自殺席って...
はぁ、つくづく鍛えた脚のお世話になるなぁ、と思いつつ交渉に。

 その甲斐あって劇場で一番というような特等席が出てきた。ローヤルフアミリー席。いやあ、これは差額戦争に駆け降りただけはありました。目の前で次々と物凄い仕掛けが展開されるのだもの。
劇場の天井からシャンデリアはガーーーー!と落ちるわ、スモッグは出るわ、花火は点火されるわ、回り舞台に斜め梯子の誘拐場面、凄い凝り方だ。
いやあ、ご立派!
マドンナは本物のバレリーナでトウシューズで軽々と踊る。踊るしソプラノでうわぁーー!と歌う事もできる。うーーーむ、やるじゃないの!
素晴らしかったです。

...でも相次ぐ旅行で時差がもろに出ている体で3時間物は辛かった。
後半はもう目が開けていられないくらいに大変でした。舞台はやはり2時間が限度と言う気がしましたよ。


[22] 華麗なるローラ Date:2002-11-28 (Thu)


 うちの家族は全員、セビリアのスポーツクラブの会員になっている。
これは1931年の設立で、営利目的ではなく、会員によって運営されている由緒あるクラブなのだ。オリンピックの引退選手やもともとは水泳の選手が基軸になって始めた。
CLUB NATACION DE SEVILLA と言ったら知らない人がいない。
この、年中なんでも休みの国にしては珍しく、年中無休。朝8時から夜11時近くまで土日祝日たがわず開いている。
ここなくしてはうちの生活は不毛になってしまうくらいだ。

 凄い会員数の筈だけどいつも割と閑散としている。仕事の退社時間にさえかち合わなければプールなんか一人の時すらある。淋しくて早く切り上げたくなるくらいだ。
マシンジムも居ても2、3人。好きなように何でも思いきり使える。体育館もある。天井の高い空間でやる必然もあるので私は毎日のようにここを縦横に使っている。大抵一人占めだ。たまにバスケのチームとかち合うけれど主将が私の終わるのを待ってくれたりする。ピルエットの練習をしていたりすると誰かが白鳥湖をハミングしたりして可笑しくてバランスを崩しそうになることはままある。

 お年寄りで健康のため、というような人でも、ばりばりやっているのが特徴で日本のプールみたいに腰だけ浸かって歩いている人は一人もいない。

 ここに長年顔見知りのローラという58才のめちやくちゃに明るい女性が来る。堅太りっていうかぱちんっとお肉の詰まった感じのはつらつとした人で、これがすごいプログラムをこなす。(秋葉原スタジオに彼女のトレーニング中の写真が飾ってありますよ!)

 筋トレなんかは前から私のやり方がダメだと言っていたけれど、この人はただの主婦だからどうしても意見を尊重する気になれなかった。

朝ににんじんのジュースを欠かさず飲み、スポーツの後にはオレンジ絞って飲み、筋トレとプールの1500メートルを泳いだ後に自宅まで何キロもあるのに来た時と同じようにスポーツバックを肩にかけて歩いて帰るっていうんだから脱帽。
 家に居る時も必ず何かしらのエクササイズをしながら家事をこなし、テレビを見ていてもだらっと緩んでいることがないと言う。
 運動の後は各種クリームなどを鏡の前に広げてマッサージや美顔をちゃんとやる。トラの足の粉末かなんかの入ったクリームを勧められて私は爆笑したことがある。
そうやって人の言う事きかないと酷い目に会うわよ、なんてにらまれていた。

これだけやるとどれが効果てきめんなのかはわからないけれど、ものすごく立派なプロポーションをしている。脚は私の勝ちだけど上体はもしかしたらあちらに負けるんじゃないかと思う。
この人、もうすぐ還暦で孫までいるのに!!!
主婦で仕事は他に持っていない。

 世の中、こういう素人もいる。おちおちできないって焦る私です。

[21] 明日はアンダルシア選手権ー新体操団体の部 Date:2002-11-24 (Sun)
 最近、スポーツねたが多い。
バレエはどうしたんだと言われそうだ。

これはBBSでお答えしているからちょっと許していただいて、筋肉、トレーニング、食事と健康、という題材はみんなここで扱うので当然スポーツもこちらに出て来る。
 スポーツ界からバレエに転向というのは意外と多いが、選手がフラメンコへ、というのはあまり聞かない。

この間はフィンランドのアイスホッケー選手からコンテンポラリーに転向したというダンサーとお近づきになった。どうして、ああいう男っぽいスポーツからダンスに?どういうきっかけで突然ダンスに目覚めたんですか?と聞くと
氷の解ける夏の間に(解ける?氷が良くなくなる、だったかな?)柔軟と身のこなしを兼ねてダンスがいいぜ、という仲間の誘いに、ふうーーむ...と乗ったのが最後、どんどんあっちに逸れて行ってしまったのだそうだ。

野球の選手は息抜き、レジャーと言ってもやっぱりゴルフなんかに行って技を考える。違う種目で思いがけない工夫を拾って来ようとする。

ホッケーもダンスに行って見るのは、身ごなしがスムースでないといけないスポーツとしては当然の発想かも知れない。

フラメンコの私は、少林寺拳法に着眼して久しい。いつか習いたいな、と思っているんだけど....いつ?
スペインでもあるのかなぁ...
あれは実に美しい。

スポーツチャンバラの師範とは親しくしていただいている。
色んな工夫もマメに頭の中にフアイルしている。

余談ながら私の弟は剣道、柔道、スキー、テニスでは師範とかインストラクターの資格まで行って、挙句に趣味ではボクシングジムにまで通っていたみたいだった。
なんだか包帯がいっぱい干してあるからどうしたのかと聞いたら今度はボクシングだって言うので呆れたのだ。
姉への抵抗か無関心のためにダンスにだけは彼は足を踏み入れていない。

そう言えば、彼の試合なんかに行ったためしがない。ご招待も受けたことがなかったと今気がついた。身近な人というのは常にこういうぞんざいな事になるものなのかも知れない。ただの弟なんかに技の工夫を聞いてみる、て事もそう言えば発想した事がない。驚くべき無関心!私とした事が。あはは、と笑ってしまおうか。...外の名人にばかり低姿勢。

 明日はアンダルシア選手権がマラガで開催され、私もご招待いただいている。先週から水泳が始まったけれど、新体操のリーグも明日から幕開けなのだ。
ただし明日は団体の演技で、個人種目はない。
私がお手伝いしているセビリアのクラブは来年三月の個人大会に出場で今回の団体には代表選手は出さない。

マラガ県はここセビリアから車で3時間ちょっとの行程だ。
トレーナーとコーチ、有力選手何人かで分乗して出る。下の娘も一応、来年は個人で出るから見学に同行。

来年の個人競技会では、私は振り付けを担当しているからこの間から勉強に忙しい。ヨーロッパ選手権ではアリーナ・カバエバなどの世界トップレベルの選手をじっくり見せていただいたけれど、国内リーグを見るのはこれに関わってきている事を更に実感させられる。

三月の選手権には、音楽担当もする。
選手のための音樂を作るのだ。
がぜん、録音スタジオでエンジニアと指しで音と効果の思考錯誤が始まりそうだ。なんだかえらいことになってしまったな、ていう感じと同時に、面白くて、可笑しくてニヤニヤしてしまう。
先週はチームのコーチとしておそろいのジャージーの採寸までされたのだ。
ああいうの、そのうち着てバスに揺られて行くらしいのだ。く、く、く...
レオタードのが色っぽくて好きなんだけどな。

 と、言うわけで明朝の5時に目覚ましをセットしたところだ。
でも、寝る前に小一時間だけスタジオにもぐって死の舞踏をおさらいしたいと思っている。なんだか楽しくてやめられないのだ、これとタラントが。

[20] 今週からリーグ開始 Date:2002-11-17 (Sun)

昨日の土曜から私の長女で水泳の選手が今期のリーグ戦に突入した。
一年間競技会で記録を出して行くのだが、その今年の第1回が昨日だった。
朝の7時から大会に出かける。昼を挟んで午後の部に入り、夜までかかる。

今日は決勝戦を戦っている。

先週は私が新体操で、今週はこの子がリーグ開始って、なんていうか気の抜けない家族環境だ。笑ってしまう。

子供は現在南スペインのチャンピオン、全スペインで6位なので、あと2年でお上に召し上げられてしまうかもしれない。
つまり国の英才オリンピック候補として14才から全国の見込みのある選手を全寮制の国営学校に入れて徹底的に鍛える制度がスペインにはある。

マドリーとマラガにこの学校は存在する。
抜群のコーチ陣の手で朝の六時から鍛えられるらしい。学校も中にあって勉強とスポーツがうまくコンビネーションできるようにしてある。しかしどの道とても厳しいのは確かだ。

水泳だけではなく、新体操も他のスポーツもここに種目別に徹底したコースが設けられ、国が代表選手を力を入れて育てている。
こういうのは、日本にもあるのだろうか?
聞いたことがないのだけれど、どなたかご存知でしたら教えてください。
スペインではこの時点から一切の費用は国が持つらしい。

毎年、全国のリストアップされている選手の健康と成長の厳しいチェックがあり、うちの娘などまだ12才になりたてなのに24時間心電図なんかを取られている。一人につき12ページくらいの詳細な身体能力の記録が出される。見ると驚き感嘆する。ありとあらゆる筋とかその辺りの柔軟性とかみんな数値で出ている。親の身長と体重もだ。...つまり私のも。けれど踊りが上手いとは書いてくれてない。残念だな。

 下の娘がどんどん新体操に進むとやっぱり14才でお上に召し上げられてしまう。まさか!とは思うけれど、何事も心の準備が大切だから、もしも二人がスペイン国籍になってしまったら、私も年貢の納め時でスペイン人になってしまおうと考え始めている。


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