インターネットを通して、
実に驚くほど、フラメンコに
行きづまっている人が
いるのを発見した。
掲示板等のインデックスを
ざっと見ただけで
一つ一つ内容は読んでいないのだけれど、
「もうこれ以上フラメンコを続けたくないのです」
などという悲惨を極める告白が切々と続く。
たまたま、生徒が一つ二つプリントアウトして来たのをどれ？
と読んでみて、
ああ、かわいそうに…
と心から同情してしまった。
この人、こうしたらいいのに、
ああしたらどう？と思わずにいられない。
私はいつもメチャクチャに忙しいので
スペインに帰ってきてしまったけど、
この一面識もない思い悩んでいる人たちの事が
今でも思い出されて仕方がない。

　私は自分のホームページを持っているくせに
インターネットができない。
「先生、もういい加減メールくらい
出来るようになってくださいよ。」
と生徒に叱られて、
「じゃ、ほら、コンピュータ見つくろって買ってきて！」と。
そこは秋葉原だ。
レッスンの合間に
人使い荒く生徒を
お使いに出してしまった。
…で、生徒が見立てて
買ってきてくれたパソコンが
あるのだけど…まだ使えない。
　…使えるようになったとして、
私からＥメールが届いたら
人はびっくりするのかしら。
なんだか、かわいそうで見捨てておけないのだもの。

「どこか基本をきちんと教えてくれる、
良心的なスクールはありませんか？」なんて言うのもあった。
私が実名でもって
「じゃ、うちにいらっしゃい。」
と言ったらあきれるかしらん。
「３ヶ月、騙されたと思って来てごらんなさい。」は？
だめかしら、こんなの。
　ざっと読んでみたって、
どんなことにつまづいて、
どんな気持ちでいるかは、
手に取るように良くわかるのだ。
なぜって、ああした辛さ、苦しさ、失意というものは、
私には鏡に映った自分の姿のように、
おなじみだからだ。
とりもなおさず、それは、
全部自分の３０年の舞踊歴に
ぎっしり詰まっている思い出だ。
ここにそれを通り越した私がいて、
多分ほとんど全ての事に適切なアドバイスが出来る気がする。
役に立てるのだったら、
一言教えてあげたいナ。
と、心から思わずにいられない。
どうしていいかわからないまま、
重い心を閉ざしているのは切ないし、
辛い事だろうと、
居ても立ってもいられない。

「自習の仕方がわからない。」
「何をどうしたらいいかわからない。」
「自分のどこかが
ものすごく間違っている事はわかるけど、
どこがどういう風にだめなのか、
誰にも言ってもらえない。」
なんて言うのを見ると、
こっちが我慢できなくなってしまう。
ええい、じれったい！
どれ！見せてごらん。
になってしまう。
　でもこればかりは、
年内にＥメールが出来るようになっても
書面で教えてあげられない。
最近ＦＡＸで相談してくる人もあって、
出来る限り丁寧に
お返事差し上げる心構えでいるが、
それもあまり数が多いと
なかなかできにくい。
国際電話をしてくる人もいる。
迷惑とは決して思わない。
でも実際に踊りをちらっとでも見てみないと…。

私が帰国している集中レッスン期間に
個人レッスンを申し込んでくれないかナ！
とつい思ってしまう。
例えば３０分だけとか。
どういう基本が出来ていなくて、
どんなレッスンをしたらいいか、
見てあげるのにナ。
目からウロコ、
すっきり気持ちが晴れてくれたら私だって、
どんなに嬉しいかしれない。
こういうきわどい発言をあえてして、
まさかレッスンの広告だと思われると、
心外なのだけれど。
どの道、個人レッスンは
とても時間数が限られているので
わずかの人しか受けつける事ができないのが現状だ。
でも本当に辛くって苦しかったら、
私もきっと力になって上げたいし、
何とかどこからか、
たとえ１回分だけでも
時間を作る努力をするので、
見せて欲しいな。
１コンパスのマルカールだけでも。
それで十分だから。

　「フラメンコもうやりたくないんです。」
あの悲しい言葉の底から、
助けを求めている声が
聞こえてくるような気がしてならない。
あなたはやめたくないのよね？そうじゃない？
幾何学に王道はないというでしょう？
フラメンコもまずこの通りなの。
基本は一つ、これも真理。
でもアプローチは一つじゃないのよ。
１人で悲しく落ち込んでいて欲しくないナ。
だってあらゆる舞踊の中で
フラメンコ程心ひかれるものがある？
きっと踊れるようになるから！
元気をだして！！



　…と書いてみて考える。
「…先生、実はあれ、私なんです。」
と自分の生徒に名乗られたら、
「フラメンコもうやめます。」
はこっちのセリフなのだ。。。（＾＾；